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結論:空き家を仲介で売るか買取で売るかは、査定書の「売値」ではなく、仲介手数料・残置物の処分・解体や修繕・引渡しまでの期間・売った後の責任を差し引いた「手元に残る金額」で比べて決めます。一般的に、売値は仲介の方が高くなりやすく、買取は早く確実に終わりやすいという違いがあります。どちらが得かは物件の状態とあなたの急ぎ具合で変わるので、同じ物件で両方の見積もりを取り、下の比較表に数字を入れて判断するのが近道です。
仲介と買取の違い:誰が買うのかが違う
仲介とは、不動産会社に買い手探しを依頼し、一般の個人や事業者に売る方法です。売主と不動産会社の間では媒介契約を結び、契約が成立したときに仲介手数料を支払います。国土交通省によると、媒介契約には3つの類型があり、依頼を受けた不動産会社は物件情報を業者間の検索システム「レインズ」に登録して、全国の不動産会社に買い手を探してもらう仕組みがあります(国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」)。
買取とは、不動産会社や買取専門の事業者が自ら買い手になる方法です。買い手を探す期間がないため、条件が合えば早く現金化できます。一方、事業者はその後にリフォームや解体をして再販売するため、その費用と利益を見込んだ価格を提示します。買取価格が仲介の想定売値より低くなりやすいのはこのためです。
つまり「仲介か買取か」は、高く売るために時間と手間をかけるか、価格を下げてでも時間と手間を買うかの選択です。空き家の場合、この「手間」の中身が普通の中古住宅より大きくなりがちなので、比べ方を間違えると損をします。
手元に残る金額の比較表:売値以外に差が出る5つの項目
下の表は、同じ空き家を仲介と買取で売るときに、手元に残る金額を左右する項目を並べたものです。金額は物件や会社ごとに違うため、表の右端の列に自分の見積もりの数字を書き込んで使ってください。
| 項目 | 仲介で売る場合 | 買取で売る場合 | 見積もりで確認すること |
|---|---|---|---|
| 売値 | 市場で買い手が付く価格。高めに出やすいが、売れるまで確定しない | 事業者の提示額。再販の費用と利益が差し引かれる | 査定額の根拠(近隣の成約事例か、再販計画か) |
| 仲介手数料 | 告示で上限あり。800万円以下の空き家は上限が最大33万円(税込)になる特例あり | 事業者が直接買う場合は通常かからない(間に仲介会社が入ると発生) | 手数料の有無と金額を媒介契約・売買契約の前に書面で |
| 残置物(家財)の処分 | 売主が片付けてから引き渡すのが基本 | そのまま引き取る条件にできる場合がある | 家財をそのままにできるか、処分費は価格から差し引かれるか |
| 解体・修繕 | 売れやすくするための修繕や、更地にする解体を売主が負担することがある | 事業者が自分で行う前提で、価格に織り込まれる | 現状のまま売れるか、売主負担の工事があるか |
| 引渡しまでの期間 | 買い手が見つかるまで不確定。その間も固定資産税・管理の手間が続く | 条件が合えば短期で決済まで進められる | 決済予定日と、それまでの維持費の見込み |
| 売った後の責任 | 個人の買い手との契約では、引き渡した物件が契約内容に合わないときの責任(契約不適合責任)をどう扱うかが論点になる | 事業者との契約で、売主の責任を限定する条件を交渉できる場合がある | 売主の責任の範囲と期間が契約書にどう書かれているか |
この表で大事なのは、仲介の欄には「売主が払うかもしれないお金」と「売れるまでの時間」が隠れていることです。売値の差が100万円あっても、片付け・解体・半年分の維持費・手数料を引くと差が縮まる、あるいは逆転することがあります。逆に、建物の状態が良く買い手が付きやすい立地なら、仲介の方が手元に多く残ることも普通にあります。
800万円以下の空き家は仲介手数料の上限が変わった
国土交通省によると、令和6年7月1日以降、物件価格が800万円以下の宅地・建物(「低廉な空家等」。使用の状態は問わない)の売買を仲介する場合、不動産会社は依頼者の一方から、原則の計算による上限を超えて、30万円×1.1倍=33万円(税込)以内の仲介手数料を受け取れるようになりました(国土交通省)。
これは、手間の割に手数料が少なく不動産会社が扱いたがらなかった安い空き家の仲介を、引き受けてもらいやすくするための特例です。売主にとっては、「安い空き家でも仲介を引き受けてもらえる可能性が上がった」一方で、「手数料は原則の計算より高くなることがある」という両面があります。国土交通省も、特例の対象になる場合は媒介契約の前に上限額の範囲内で金額を合意しておくことが重要だとしています。
比較表の「仲介手数料」の欄には、原則の計算ではなく、実際に提示された金額を書き込んでください。なお、原則の上限の計算例として、国土交通省は物件価格1,000万円(税別)の場合に上限39.6万円(税込)と示しています。
どちらが向いているか:判断の分岐
次の問いに順番に答えると、どちらを先に検討すべきかの目安になります。あくまで目安なので、最後は比較表の数字で決めてください。
- 建物は今のまま住める・使える状態か? → はい:仲介で買い手が付く可能性が高い。仲介の査定を先に取る。いいえ(雨漏り・傾き・長期放置):買取の見積もりも並行して取る。
- 家財の片付けを自分たちで進められるか? → 遠方・高齢・人手がない場合は、片付け費用と手間を比較表に入れる。残置物ごと引き取る買取の条件が効いてくる。
- いつまでに売りたいか? → 相続税の納付や、下で触れる税金の特例の期限があるなら、売れる時期の確実さに価値がある。期限から逆算して何か月使えるかを書き出す。
- 売った後に建物の不具合で揉めたくないか? → 長く空き家だった建物は、売主自身も状態を把握しきれていないことが多い。契約書の責任の範囲を、仲介と買取の両方で確認する。
- 再建築できない・共有名義で全員の同意がない・接道に問題があるなど、事情がある物件か? → 一般の買い手が付きにくいため、訳あり物件を扱う買取事業者に相談する選択肢を入れる。
- 土地は地主から借りている(借地の上の家)か? → 第三者へ売るには原則として地主の承諾が要る。仲介か買取かを比べる前に、相続した借地権の家を売るで地主に聞くことと4つの売り方を確認する。
そもそも売るか、貸す・管理して残すかがまだ決まっていない場合は、先に空き家の使い道を決める前に確認する3つの条件で整理してから、この比較に戻ってください。
すでに仲介で売り出していて買い手が付かない場合は、空き家が売れない原因を4つの確認先に分ける記事で、仲介を続けるか買取も比べるかを決める前に聞くべき数字を整理しています。解体してから売るかどうかで迷っている場合は、空き家を解体するか迷ったときの判断の記事で、解体前に確認する順番をまとめています。解体すると決めて見積もりを取る段階なら、空き家の解体見積書の見方で、総額でなく行ごと(付帯工事・アスベスト調査・残置物)に比べる確認表を使えます。
3,000万円控除は、仲介でも買取でも使える場合がある
相続した実家を売るときに大きいのが、国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。一定の要件に当てはまれば、譲渡所得から最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除できます。対象は令和9年12月31日までの売却です(国税庁 No.3306)。
仲介か買取かを選ぶうえで押さえておきたい要件は次の3つです。
- 売却代金が1億円以下であること
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売ったものでないこと(身内への売却は対象外)
- 建物の要件:昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることなど。売る時点で一定の耐震基準を満たすか、取り壊してから土地を売るのが基本ですが、売った年の翌年2月15日までに買主側で耐震改修や取壊しを行った場合も対象になると国税庁は示しています
最後の点は、「解体してから売るか、現状のまま買取事業者に売るか」を考えるときに関係します。ただし要件はほかにも細かくあり、適用できるかは個別の事情で決まります。契約前に税理士か税務署に、自分のケースで使えるかを確認してください。控除の全体像と期限は相続した実家を売るなら3年目の年末までの記事で、相続全体の相談先の使い分けは相続した不動産を売るときの相談先の記事でまとめています。
仲介でも買取でもかかる費用:印紙税・測量・登記・税金の申告
上の比較表は「仲介と買取で差が出る項目」です。これとは別に、どちらで売っても出てくることがある費用があります。金額は物件と契約で変わるので、見積もりの段階で行ごとに確認してください。
| 費用 | 出てくる場面 | 金額の確かめ方 | 国税庁の「譲渡費用」の例に載っているか |
|---|---|---|---|
| 売買契約書の印紙税 | 売買契約を結ぶとき | 契約書に書く金額で決まる。令和9年3月31日までに作る契約書は軽減税額(例:500万円超1,000万円以下は5千円、1,000万円超5,000万円以下は1万円)=国税庁 No.7108 | 載っている(売買契約書の印紙代) |
| 仲介手数料 | 仲介で売るとき | 上の「800万円以下の空き家は仲介手数料の上限が変わった」の節 | 載っている |
| 測量費 | 境界がはっきりしない・買主が確定測量を求めるとき | 不動産会社に「測量が要る取引か」を先に聞き、要るなら見積もりを取る | 載っている |
| 建物の取壊し費用 | 解体して土地として売るとき | 解体業者の見積書を行ごとに比べる(空き家の解体見積書の見方) | 載っている(建物を取り壊して土地を売るとき) |
| 抵当権の抹消登記 | 昔の住宅ローンなどの担保が登記に残っているとき | 登記事項証明書で抵当権が残っているかを見て、司法書士に見積もりを取る | 例には載っていない(税理士・税務署に確認) |
| 相続登記 | 名義が亡くなった方のままのとき | 相続登記の期限と費用の記事 | 例には載っていない(税理士・税務署に確認) |
| 家財の片付け | 家財が残ったまま引き渡せない契約のとき | 買取なら「家財が残ったままの価格」も聞く(実家の片付けの順番) | 例には載っていない(税理士・税務署に確認) |
税金の計算では、売った金額から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いた額が譲渡所得になります。譲渡費用は「土地や建物を売るために直接かかった費用」で、国税庁は仲介手数料・測量費・売買契約書の印紙代・取壊し費用などを例に挙げています(国税庁 No.3202)。領収書と見積書は、売った翌年の申告の相談まで捨てずに残しておくと、税理士や税務署に確認するときに話が早く進みます。例に載っていない費用を差し引けるかは、自分で決めずに確認してください。
査定・見積もりのときに業者へ聞く質問の文例
仲介と買取の見積もりを並べるとき、次の質問をそのまま使うと、比較表の空欄が埋まります。口頭の回答だけでなく、できるだけ書面やメールで残してもらうのがおすすめです。
- 「この査定額は、近くで実際に売れた事例をもとにしていますか。それとも、買い取った後の再販計画から逆算していますか」
- 「家の中の家財はそのままで構いませんか。処分が必要な場合、その費用は誰が負担し、価格のどこに反映されていますか」
- 「引渡しまでに、売主側でやらなければいけない工事や手続きはありますか」
- 「仲介の場合、手数料はいくらになりますか。800万円以下の特例を適用する場合は、その金額を事前に書面で示してもらえますか」
- 「売った後に雨漏りやシロアリなどが見つかった場合、売主の責任はどこまでで、いつまでですか」
- 「決済(代金の受け取り)はいつ頃になりそうですか。それまでの固定資産税や管理費用はどう扱いますか」
同じ質問を複数の会社にすると、回答の具体性で会社の向き不向きも見えてきます。答えがあいまいな項目は、比較表に「未確認」と書いておき、契約前に必ず埋めてください。
買取の見積もりを取るときの入口
仲介の査定は地元の不動産会社に依頼するのが一般的ですが、買取の見積もりも並べて比べたい場合は、空き家の買取を扱うサービスに問い合わせる方法があります。
どの方法で売る場合も、見積もりを取ることと、契約することは別です。比較表が埋まり、家族の合意が取れてから契約に進んでください。空き家を相続してからの全体の流れは、実家・空き家を相続したら何から?(ハブ記事)で判断の順番に並べています。
よくある質問
Q. 空き家は仲介と買取、結局どちらが高く売れますか?
A. 一般的に売値は仲介の方が高くなりやすいですが、仲介手数料・片付け・解体や修繕・売れるまでの維持費を差し引いた「手元に残る金額」で比べると、差が縮まったり逆転したりすることがあります。同じ物件で両方の見積もりを取り、比較表で比べるのが確実です。
Q. 800万円以下の空き家だと仲介手数料はいくらになりますか?
A. 国土交通省によると、令和6年7月1日以降、800万円以下の宅地・建物の仲介では、依頼者の一方から受け取れる手数料の上限が30万円×1.1倍=33万円(税込)まで認められています。これは上限なので、実際の金額は媒介契約の前に不動産会社と合意して決めます。
Q. 買取に売っても3,000万円控除は使えますか?
A. 国税庁の特例は、買主が親子や夫婦など特別の関係がある人でないこと、売却代金が1億円以下であることなどの要件を満たせば、買主が事業者でも対象になり得ます。売った年の翌年2月15日までに買主側で耐震改修や取壊しを行った場合も対象になると示されています。ただし要件は細かいため、契約前に税理士か税務署で確認してください。
Q. 家財が残ったままでも売れますか?
A. 仲介では片付けてから引き渡すのが基本ですが、買取では家財ごと引き取る条件にできる場合があります。その場合でも処分費が価格に反映されていることが多いので、見積もりのときに「家財の処分費はどこに含まれているか」を確認してください。
※この記事は一般的な情報の整理です。個別の売却・税金の判断は、不動産会社・税理士などの専門家にご確認ください。制度の内容は記事更新時点(2026年10月)の国土交通省・国税庁の公表情報に基づいています。
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