空き家の解体見積書の見方|総額でなく行ごとに比べる確認表と、契約前に聞く質問

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結論:空き家の解体見積書は、総額の安さではなく「何が含まれていて、何が別料金で、何が起きたら追加になるか」を1行ずつ見て比べます。比べる順番は、①建物本体の解体 ②付帯工事(塀・カーポート・庭木・土間など) ③残置物(家財)の処分 ④石綿(アスベスト)の事前調査と除去 ⑤廃材の処理と書類 ⑥届出・登記の代行 ⑦追加費用の条件、の7つです。そのうえで、床面積80㎡以上の解体なら着工前の届出と報告、解体後1か月以内の滅失登記まで、誰がいつやるのかを契約前に決めておきます。

この記事は、解体するかどうかを決めた後、または決めるために見積もりを取った段階の方に向けたものです。そもそも解体するか迷っている方は、先に空き家を解体するか迷ったら|壊す前に確認する4つのことを、実家・空き家の判断全体の順番は実家・空き家を相続したら何から?をご覧ください。

雨漏りなど建物の傷みがきっかけで解体を考え始めた方は、修理か解体かを決める前に、被害の記録と修理見積もりの比べ方を空き家の雨漏りに気づいたら|修理前に記録する5項目で確認しておくと、判断の材料がそろいます。

解体見積書とは:工事の範囲を約束する書類

解体見積書とは、解体業者が「この範囲の作業を、この金額で行う」と示す書類のことです。後で契約書に引き継がれるため、見積書に書かれていない作業は、原則として別の費用になると考えて読みます。

総額だけで比べると失敗しやすいのは、業者によって見積もりに含める範囲が違うからです。ある業者は庭木や残置物の処分を含めた金額を出し、別の業者は建物本体だけの金額を出すことがあります。この場合、安く見える方が実は高くつくことがあります。

なお、環境省の説明によると、建設リサイクル法の対象となる解体工事(建築物では床面積80㎡以上)の請負契約では、解体工事に要する費用や再資源化等に要する費用を契約書に明記することが義務付けられています(環境省「建設リサイクル法の概要」)。内訳を出してもらうことは、特別なお願いではありません。

見積書を1行ずつ読む確認表:7つの項目

下の表を、受け取った見積書の横に置いて使ってください。業者ごとに「含む/別料金/記載なし」に印をつけると、どこに差があるのかが見えます。「記載なし」の行は、契約前に必ず書面で確認します。

項目見積書で見る行差が出やすい点業者に確認すること
①建物本体の解体構造(木造・鉄骨など)、延床面積、単価面積の数え方(登記面積か実測か)、2階建ての扱い面積は何を根拠にしたか。現地を見たうえでの金額か
②付帯工事ブロック塀、門扉、カーポート、物置、庭木・庭石、土間コンクリート、浄化槽「一式」とまとめられていて範囲が読めない敷地内のどれを撤去し、どれを残すか。残す物は図や写真で指定できるか
③残置物(家財)の処分家具・家電・衣類・畳などの処分費含まない業者が多い。家電リサイクル対象品の扱い家財を残したまま依頼できるか。自分で片づけた場合いくら下がるか
④石綿(アスベスト)事前調査費、分析費、除去費「調査は別途」「含有時は別途」と書かれ、金額が空欄事前調査は誰が行うか(講習修了者か)。含有が分かった場合の費用の決め方
⑤廃材の処理産業廃棄物の運搬・処分費極端に安い見積もりはここが抜けていることがある処分先と、処理したことを示す書類(マニフェストの写しなど)を受け取れるか
⑥届出・登記の代行建設リサイクル法の届出、道路使用許可、滅失登記届出の代行は含むが、登記は含まないことが多いどの届出を誰の名前で出すか。滅失登記は誰に頼むか
⑦追加費用の条件地中埋設物、想定外の基礎、近隣対応「別途協議」とだけ書かれている何が出たら追加になるか。追加の単価と、工事を止めて連絡するかどうか

表を埋めると、多くの場合、総額の差は①ではなく②〜⑦から生まれていることが分かります。安い見積もりを選ぶ前に、その業者の「別料金」の行を足し戻した金額で比べてください。

石綿(アスベスト)の事前調査:古い家ほど見積もりが動く

石綿は、肺がんや中皮腫の原因になるとされる建材で、古い建物に使われていることがあります。そのため解体や改修の前には、石綿が含まれているかどうかの事前調査が必要です。

厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトによると、令和5年10月1日以降に着工する建築物の工事では、事前調査は厚生労働大臣が定める講習の修了者等が行うことになっています。また、令和4年4月1日から事前調査結果の報告が義務化されており、石綿の有無によらず、解体部分の床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事は報告の対象です(厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」)。

同サイトの発注者向けページでは、石綿は平成18年(2006年)9月から輸入・製造・使用などが禁止されたものの、それ以前に着工した建築物等には使用されている可能性があるとし、発注者は設計図書など石綿の使用状況を施工業者に通知するよう努める必要がある、としています(厚生労働省「解体・改修工事の発注者のみなさまへ」)。実家の建築時の図面や確認済証が残っていれば、見積もり依頼のときに一緒に渡すと、調査と見積もりの精度が上がります。

見積書の読み方として大事なのは、次の2点です。

  • 事前調査の費用が見積もりに入っているか。「調査は別途」の場合、調査費を足して比べます。
  • 石綿が見つかったときの費用の決め方が書かれているか。除去費は建材の種類や量で変わるため、最初から確定しないことがあります。その場合でも、どの時点で金額を出し、施主の了解を取ってから工事を進めるのかを書面で決めておきます。

石綿の除去や調査の費用には、自治体が補助制度を設けている場合があります。制度の有無と条件は自治体ごとに違うため、空き家がある市区町村の窓口で、契約前に確認してください。

着工前と解体後の手続き:誰がいつやるのかを決める

解体工事には、見積書の金額とは別に、期限のある手続きがあります。業者が代行してくれるものもありますが、法律上の義務者が施主(発注者・所有者)になっているものがあるので、誰がやるのかを契約前に決めておきます。

時期手続き義務を負う人・期限一次資料
契約前自治体の解体・除却の補助制度の確認制度ごとに違う。契約後・着工後は対象外になる制度がある空き家がある市区町村の募集案内
着工7日前まで建設リサイクル法の届出(建築物の解体は床面積80㎡以上)発注者から都道府県知事へ環境省
着工前石綿の事前調査と、その結果の報告(解体部分80㎡以上)調査は講習修了者等が行う厚生労働省
解体後1か月以内建物の滅失の登記表題部所有者または所有権の登記名義人不動産登記法第57条

建設リサイクル法の届出は、実務では業者が書類を作り、施主の委任を受けて提出することが多い手続きです。見積書の⑥の行に「届出代行」が入っているかを確認し、入っていなければ誰が出すのかを聞いてください。

滅失登記は、解体業者の工事範囲には通常含まれません。自分で法務局に申請するか、土地家屋調査士に依頼します。法務局の建物滅失登記申請書の記載例では、添付情報として「建物滅失証明書」が挙げられています。解体業者から、登記に使うこの証明書を受け取れるかを契約前に確認しておきます(法務局「不動産登記の申請書様式について」4 建物の滅失)。

また、建物を解体すると、翌年度以降の土地の固定資産税が上がることがあります。仕組みは空き家の固定資産税は本当に6倍になるのかで整理しています。解体の時期を決める前に一度確認してください。

売るために壊す場合は、領収書と内訳を残す

解体した後に土地を売る予定なら、見積書・契約書・領収書をまとめて保管しておきます。国税庁によると、土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用は「譲渡費用」に当たり、譲渡所得の計算で売った金額から差し引けます。一方、固定資産税や修繕費など維持・管理のための費用は譲渡費用になりません(国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの)。

相続した空き家の場合は、条件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例もあります。特例の条件や売却の相談先は相続した不動産を売るときの相談先で整理しています。個別の税額や特例の適用は、税理士または税務署に確認してください。

契約前に業者へ聞く質問:そのまま使える文例

見積もりを比べる段階で、各社に同じ質問を同じ文面で送ると、答え方の違いからも業者の姿勢が見えます。下の文例はそのまま使えます。

  1. 「この見積もりの面積は、登記の面積と現地での実測のどちらを根拠にしていますか。」
  2. 「ブロック塀・物置・庭木・土間コンクリートのうち、見積もりに含まれるものと含まれないものを教えてください。」
  3. 「家財を残したまま依頼した場合と、こちらで片づけた場合の金額の差を教えてください。」
  4. 「石綿の事前調査は、どなたが行いますか。調査費は見積もりに含まれていますか。含有が分かった場合、費用はいつ、どのように決まりますか。」
  5. 「地中から埋設物が出た場合、追加費用の単価と、工事を止めて連絡してもらえるかを教えてください。」
  6. 「建設リサイクル法の届出は代行していただけますか。滅失登記に使う書類は出していただけますか。」
  7. 「廃材の処分先と、処理したことを示す書類の写しをいただけますか。」

答えが口頭だけの場合は、メールなど書面で残してもらいましょう。契約書に反映されているかも、署名の前に確かめます。

よくある質問

Q. 一番安い見積もりを選んではいけませんか?

A. 安いこと自体が問題なのではなく、何が含まれていないかが分からないまま選ぶのが問題です。確認表の②〜⑦で「別料金」「記載なし」の行を足し戻し、同じ範囲にそろえた金額で比べてから判断してください。

Q. 見積もりは何社から取ればよいですか?

A. 決まりはありませんが、範囲と金額の差を見るには複数社が必要です。各社に同じ条件(この記事の確認表と質問文例)を伝えると、比べやすくなります。

Q. 床面積が80㎡未満なら、届出や石綿の調査はいりませんか?

A. 建設リサイクル法の届出と、石綿の事前調査結果の報告は、建築物の解体ではいずれも80㎡が目安になっています。一方、厚生労働省の発注者向けページは、建築物等の解体・改修を行う事業者には法令により石綿の含有の有無の事前調査を行う義務があるとし、発注者には見積もりに事前調査費用が計上されているかを確認するよう求めています。報告の対象かどうかとは別に、見積書に事前調査の行があるかを確認してください(厚生労働省「解体・改修工事の発注者のみなさまへ」)。

Q. 滅失登記をしないとどうなりますか?

A. 不動産登記法第57条で、建物が滅失した日から1か月以内に申請することが定められています。登記が残ったままだと、土地の売却や新しい建物の登記の手続きに支障が出ることがあります。自分で申請するか、土地家屋調査士に相談してください。

まとめ:総額を見るのは、範囲をそろえた後

  • 解体見積書は、7つの項目を1行ずつ「含む/別料金/記載なし」で比べる
  • 石綿の事前調査の費用と、含有が分かったときの費用の決め方を書面で確認する
  • 床面積80㎡以上なら、着工7日前までの届出と石綿の事前調査結果の報告がある。誰が出すのかを契約前に決める
  • 解体後1か月以内に滅失登記。業者から登記に使う書類を受け取る
  • 売るために壊すなら、取壊し費用は譲渡費用になり得る。領収書と内訳を残す

解体するかどうか自体を決め直したい方は、空き家を解体するか迷ったらで、残して売る場合との比べ方を確認してください。

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