廃校活用を検討するときは、実際の使われ方と、自分の案件で確認すべき条件を一緒に見ていきましょう。醸造所、飲食・宿泊、仕事や交流の拠点、ものづくりなど、学校だった建物にはさまざまな使い方があります。
この記事では、自治体・国・運営者の公開資料で用途を確認できる7件と、公募で事業者が決まらなかった1件を紹介します。そのうえで、応募前に確認したい建物・需要・地域との調整・契約条件を整理します。活用されていることだけでは、黒字経営や投資回収まで確かめたことにはなりません。
編集注:一次資料を確認し、施設名・用途・数値を見直して7件に再構成しました。根拠を確認できない収益・補助額などの記述は掲載していません。資料確認日:2026年10月6日。旧影石小学校は2019年の記録に基づく歴史事例です。
第1章:文部科学省の調査で分かる活用状況
文部科学省の令和6年度廃校施設活用状況実態調査(文部科学省の資料)は、全国の公立小中学校等を対象に、2024年5月1日時点の状況を示しています。2004年度から2023年度に発生した廃校は延べ8,850校で、施設が現存するのは7,612校。そのうち5,661校、74.4%が活用され、1,951校は活用されていません。
この調査で把握できるのは施設の活用状況です。民間事業の利益率、投資回収期間、途中で撤退した事業の割合を、この74.4%から読み取ることはできません。また、「未活用」という区分だけでは、民間向けの売却・賃貸が募集されているかは判断できません。募集状況は別に確認します。
第2章:一次資料で用途を確認した7つの活用事例
比較するポイントは、使っている建物の範囲、組み合わせている用途、運営者と確認時点です。以下は用途の参考例であり、収益性の順位付けや事業の推奨ではありません。
| 事例・所在地 | 旧学校名 | 確認できる主な用途 | 確認の範囲 |
|---|---|---|---|
| ① Brasserie Knot 北海道鶴居村 |
旧茂雪裡小学校 | ビール醸造・見学・直売 | 運営者の施設案内 |
| ② おいしい学校 山梨県北杜市 |
旧津金小学校 | レストラン・パン工房・物販・宿泊 | 文科省と運営者の案内 |
| ③ 上ノ国ワイナリー&サテライトオフィス 北海道上ノ国町 |
旧湯ノ岱小学校 | ワイン醸造・販売・仕事・宿泊 | 町と運営者の案内 |
| ④ 旧影石小学校 岡山県西粟倉村 |
旧影石小学校 | 地域の事業者が集まる拠点 | 2019年の内閣府訪問報告 |
| ⑤ ヤマドリ珈琲 千葉県市原市 |
旧月出小学校 | 珈琲焙煎・喫茶・販売・体験 | 運営者の施設・店舗案内 |
| ⑥ ひびきの丘 北海道石狩市 |
旧聚富小中学校 | 交流・学び・イベントの場 | 活動開始報告と2026年のイベント告知 |
| ⑦ 南三陸YES工房 宮城県南三陸町 |
旧入谷中学校 | ものづくり・販売・ワークショップ | 運営者の沿革と施設案内 |
事例①:Brasserie Knot(北海道鶴居村)
旧茂雪裡小学校を改装したクラフトビール醸造所です。運営者の公式案内(運営者の公式案内)では、学校の外観を残しながら、醸造工程を見学できる通路とビールの直売所を整備したことが確認できます。製造拠点に見学・直売の機能を組み合わせた活用例です。自分の計画に取り入れる際は、醸造設備の設置条件に加え、原料や製品の搬出入と来場者の動線を確認しましょう。
事例②:おいしい学校(山梨県北杜市)
旧津金小学校の昭和校舎を活用した施設で、文部科学省の事例リンク集(文部科学省の資料)にも掲載されています。運営者の施設案内(運営者の公式案内)では、和食・イタリアンのレストラン、パン工房、農産物販売所、宿泊施設などを確認できます。教室の机・椅子を使った給食の提供(運営者の公式案内)もあり、校舎の雰囲気を食の体験に生かしています。飲食、物販、宿泊を組み合わせる際の施設構成を考える参考になります。
事例③:上ノ国ワイナリー&サテライトオフィス(北海道上ノ国町)
町の施設案内(自治体の公式資料)によると、旧湯ノ岱小学校を改修し、体育館にワイン醸造設備、校舎にワインショップとサテライトオフィスを設けています。宿泊可能な個室タイプのオフィスは8室あり、製造・販売と仕事・滞在の機能を組み合わせています。運営者の施設概要(運営者の公式案内)でも各用途を確認できます。複合利用を検討する際は、用途ごとの設備、運営人員、維持費を分けて見積もることが大切です。
事例④:旧影石小学校のローカルベンチャー拠点(岡山県西粟倉村)
内閣府の2019年の現地訪問報告(冊子22ページ)(内閣府の訪問報告)では、旧影石小学校がウナギの養殖、帽子店、日本酒を扱う店など、地域の事業者が集まる場として紹介されています。ここでは当時の複合活用の例として扱います。なお、西粟倉森の学校の現在の公式案内(運営者の公式案内)には、旧影石小学校から旧ナカバヤシ岡山工場へ事務所を移転した旨が明記されています。視察や事業比較では、昔の施設名だけで判断せず、運営者の現在地と利用している建物を確認しましょう。
事例⑤:ヤマドリ珈琲(千葉県市原市)
旧月出小学校を活用した「月出工舎」の一角にある珈琲焙煎所です。運営者の公式サイト(運営者の公式案内)では、元の給食室と宿直室を焙煎室・保管室として使っていることが確認できます。店舗案内(運営者の公式案内)には、週末の喫茶・珈琲豆販売と秋冬の焙煎体験も掲載されています。校舎の一部を製造・販売・体験の場にする例として、使用面積と必要設備、営業日ごとの運営体制を考える参考になります。
事例⑥:ひびきの丘(北海道石狩市)
旧聚富小中学校を活用した交流・学びの場です。石狩市の令和2年度実施事業一覧(自治体の公式資料)には旧校の売却完了が記録されています。運営関係者の2021年11月15日付記事(運営者の公式案内)では、同年3月24日に北海道統合医療協会へ譲渡され、活動を開始したと報告されています。2026年8月14日付の関連施設の告知(運営者の公式案内)でも、旧校を会場とするマルシェが案内されています。この告知だけでは、実際の開催結果や来場者数までは確認できません。
事例⑦:南三陸YES工房(宮城県南三陸町)
旧入谷中学校の建物を活用した、地域のものづくり拠点です。運営者の沿革(運営者の公式案内)では、東日本大震災後に工房が始まり、オクトパス君グッズ、まゆ細工、木工製品を手がけてきたことが確認できます。施設案内(運営者の公式案内)によると、本社・第1工場はかつて中学校の特別教室として使われた建物で、製作に加え、物販や少人数のワークショップに対応。旧体育館は第2工場・ワークショップ会場として活用されています。建物の広さを使い分け、製作・販売・体験を組み合わせた例です。
ここまでで気になる用途が見つかったら、自分の候補施設で成り立つかを一次診断(無料)で確認することもできます。
第3章:公募段階の不選定と、応募前に確認したいリスク
廃校活用の「失敗例」を読むときは、事業者が決まらなかった段階と、開業後に継続できなくなった段階を分けて確認します。文部科学省の令和6年度調査にある74.4%は、現存する廃校施設のうち活用されている施設の割合です。黒字経営や事業継続の割合は、この数字からは判断できません。調査結果(2024年5月1日時点、1ページ)(文部科学省の資料)
事業者が決まらなかった実例:南あわじ市・旧倭文中学校
南あわじ市の公表資料によると、2024年12月12日に行われた審査では、2者が参加したものの、いずれも総合評価の平均が60点未満だったため、優先交渉権者は選ばれませんでした。市の審査結果(自治体の公式資料)で確認できるのは、公募段階で事業者の選定に至らなかったことです。赤字や改修費の超過が原因だったかは、この公表資料だけでは分かりません。
その後、市は屋内遊び場の整備検討を進め、市民ワークショップを実施しています。2026年3月10日更新の市の報告(自治体の公式資料)では、令和8年度以降も活用を検討するとしています。過去の不選定と、その後の活用方針は、日付を分けて読みましょう。
自分の候補施設では、募集要項の評価項目・最低基準点・必須条件を先に確認してください。そのうえで、改修や維持管理の負担、契約期間、終了時の扱いを資料に照らして整理します。不明な点を自治体へ聞く質問例は、サウンディング型市場調査とは|公募との4つの違いと、何を聞くべきか(関連記事)にまとめています。
以下の4項目は、候補施設を検討するときの確認事項です。個別事例の原因は、その案件の公表資料で確かめてください。
確認①:建物の状態と、改修・修繕の負担
- 図面、耐震診断、改修履歴、設備の点検記録はどこまで確認できるか
- 雨漏り、屋根・外壁、給排水、電気、冷暖房などに調査・修繕が必要か。誰に調査や見積もりを依頼するか
- アスベストやPCBなどの調査資料はあるか。未確認の場合、必要な調査と費用負担を誰に確かめるか
- 開業時の改修、毎年の維持管理、大きな設備更新を、所有者と利用者のどちらが負担するか
用途の案と必要な設備を建築士などへ示し、現地確認と見積もりを進めます。資料が足りない段階では、改修費を一つの確定額にせず、未調査の範囲と追加調査の費用を残しておきましょう。
確認②:地域との調整と、日常の管理
- 地域が引き続き使う部屋や行事、防災上の役割はあるか
- 営業日・時間、車の出入り、音、駐車場、清掃について、事前に相談する相手は誰か
- 地域開放や交流事業が募集条件に含まれる場合、その実施範囲と費用をどう見積もるか
- 連絡窓口、鍵の管理、事故や苦情があったときの対応を誰が担うか
確認③:需要と、運営に必要な資金
- 誰が、何のために、どの頻度で利用・購入する想定か。その根拠になる聞き取り、予約、取引先候補はあるか
- 平日と休日、季節、天候によって利用が減る場合を、収支にどう反映するか
- 人件費、光熱費、修繕、保険、清掃、仕入れなど、開業後に必要な支出を確認したか
- 売上が計画を下回る場合、開業が遅れる場合、大きな修繕が生じる場合に、手元資金はどこまで対応できるか
この記事の事例には、利益や投資回収を確認できる資料を付していません。他施設の用途だけを根拠に売上を置かず、自分の候補地と運営体制に合う前提を集めます。
確認④:応募資格、用途の手続き、契約の終わり方
- 個人・法人・共同事業者の応募資格と、実績や資金計画の要件は何か
- 希望する用途は募集条件に合うか。建築・消防・衛生などについて、どの窓口と専門家に手続きの要否を確認するか
- 契約期間、更新の条件、途中終了の申出期限や費用はどう定められているか
- 改修した設備を契約終了時にどう扱うか。原状回復や撤去の範囲は文書で確認できるか
用途変更や許認可の要否を、この一覧だけで判断することはできません。候補施設の用途・規模・現況を示して担当窓口と専門家に確認し、契約条件と合わせて整理してください。
第4章:自分の候補施設で、次に進めること
1.募集の原文と更新日を確認する
候補を探す入口には、文部科学省の「現在活用用途を募集している廃校施設の一覧」(文部科学省の資料)があります。同ページは、募集終了や内容変更の可能性があるため、施設を所管する自治体へ確認するよう案内しています。一覧で候補を見つけたら、自治体の最新の募集要項、質問回答、現地見学の案内を読みましょう。
2.費用と条件を、根拠付きのメモにする
確認したことは、次の形で整理すると、追加調査を依頼しやすくなります。金額が分からない欄は、ゼロ円として埋めず「未確認」と書きます。
- 対象:施設名、所在地、使う建物・敷地の範囲、希望する用途
- 契約:売却・賃貸などの形、対価、契約期間、更新・終了時の条件
- 費用:調査、改修、開業準備、運転資金、維持管理、設備更新、終了時の撤去・原状回復
- 需要:想定する利用者・取引先、営業日、価格と数量の前提
- 確認先:根拠資料と日付、未回答の質問、回答をもらう相手と期限
3.補助制度は、対象と条件を確かめてから計画へ入れる
文部科学省の「みんなの廃校」プロジェクト(文部科学省の資料)では、利用可能な補助制度を紹介し、要件や詳細を所管官庁へ問い合わせるよう案内しています。検討中の制度について、申請者、対象経費、年度、申請・着手の時期、併用条件、入金時期を募集要領で確認してください。採択や対象範囲が未確定の補助金は、受け取れる前提だけで資金計画を組まないようにします。
よくある質問
個人でも廃校活用に応募できますか?
候補施設の募集要項で確認してください。応募資格が自分に当てはまるか、共同での応募を認めるか、必要な事業実績や資金資料は何かを担当課へ確認します。
事例の売上や補助額を、自分の計画に使ってよいですか?
時期、建物の状態、契約、事業規模、対象経費がそろわない数字は、そのまま比較できません。本記事の7件は用途の参考例です。費用は候補施設の見積もり、売上は需要の根拠、補助額は該当年度の制度要件から別々に確かめてください。
最初に誰へ相談すればよいですか?
まず募集要項や自治体の施設案内に記載された担当窓口へ、資料・応募資格・用途の条件を確認します。建物と改修は建築士など、手続きは所管窓口、資金面は金融機関など、論点ごとに確認先を分けると整理しやすくなります。
まとめ:用途の参考例を、自分の確認事項に変える
7件の資料からは、校舎の一部や体育館などを、事業や活動に合わせて使う姿が分かります。施設名だけで比べず、どこを何に使い、誰が運営し、いつの資料で確認できるのかを見てください。
次の一歩は、候補施設の募集資料を読み、分かっている条件と未確認の点を分けることです。建物、需要、地域との調整、契約を確認し、必要な調査と見積もりがそろった段階で応募を判断しましょう。
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