廃校の用途変更と建築基準法|確認申請が要る・要らないの分かれ目

今回読んだ廃校の募集要項3件には、いずれも「建築基準法や消防法などの関係法令を遵守すること」という趣旨の条項がありました。市川町の旧鶴居中学校の要項は「建築基準法・消防法等の関係法令や条例、町の指導等を遵守する」、真岡市の要項は「改修等のために必要な各種法令等に基づく届出は利用事業者が行う」と書いています。宮古市の要項も、施設の整備・運営にあたって建築基準法や消防法等を遵守するよう求めています。

つまり、この3件の要項では、用途を変えるときの建築基準法の手続は、借り手・買い手の側の仕事として書かれています。この記事では、建築基準法の条文と国土交通省の通知を原本で読み、廃校を別の用途で使うときに、建築確認が要るかどうかを分ける線を整理します。不動産と金融の実務を15年やってきた立場から、設計の細部ではなく「最初にどこを確認するか」に絞ります。

学校は、建築基準法上の「特殊建築物」にあたる

建築基準法の別表第一は、耐火建築物等にしなければならない特殊建築物を用途ごとに挙げています。その(三)に、学校・体育館が載っています。廃校になっても、建物はこの用途区分のまま残っています。そこから別の用途にするのが「用途変更」です。

別表第一(い)欄には、学校のほかに次のような用途が並んでいます(条文に例示されているもの)。

  • (一)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
  • (二)病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎
  • (三)学校、体育館
  • (四)百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場
  • (五)倉庫
  • (六)自動車車庫、自動車修理工場

各項には「その他これらに類するもので政令で定めるもの」が含まれるので、実際の判定は政令まで見る必要があります。ここでは、宿泊施設や集会・展示・遊技の用途は特殊建築物の側に入ることだけ押さえておきます。

確認申請が必要になる3つの条件

用途変更で建築確認の申請が必要かどうかは、建築基準法第87条第1項と第6条第1項第一号を読み合わせると決まります。条文の骨組みは次の3つです。

  1. 変更後の用途が、別表第一(い)欄の特殊建築物のいずれかか
  2. その変更が、政令で指定する「類似の用途相互間」のものではないか(類似用途間の変更は除かれる)
  3. その用途に使う部分の床面積の合計が、200平方メートルを超えるか

3つとも当てはまるときに、確認申請が必要になります。逆に言うと、変更後の用途が(い)欄に載っていなければ、この条文による確認申請の対象にはなりません。たとえば事務所は、(い)欄の(一)〜(六)のどこにも出てきません。

なお、第6条第1項の第一号は「その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超える」と書いています。校舎全体の面積ではなく、新しい用途に使う部分の合計面積で見る点は、読み違えやすいところです。

200平方メートルは、平成30年の改正で変わった数字

国土交通省の通知(令和元年6月24日付 国住指第661号)は、建築確認の対象となる床面積の合計が100平方メートルを超えるものから200平方メートルを超えるものに改められたと説明しています(建築基準法の一部を改正する法律・平成30年法律第67号の施行に伴うもの)。古い資料やブログには「100㎡超で確認申請」と書かれたものが残っているので、年代を確認してください。

確認申請が不要でも、法令の遵守は残る

同じ通知は、200平方メートル以下の特殊建築物への用途変更では確認申請が不要になるとしたうえで、建築基準法令および消防法令を遵守することは従前から変わりがないと書いています。さらに、手続が不要な小規模のものでも、建築部局や消防部局に事前に相談することを勧めるよう、都道府県に依頼しています。

この通知が念頭に置く用途には、ホテル・旅館・下宿、保育所などの児童福祉施設、老人福祉施設、寄宿舎(グループホーム)、劇場・映画館・公衆浴場などが挙がっています。小さく始めるほど「申請がないから規制もない」と誤解しやすいので、申請の要否と、規制が適用されるかどうかは別の話として分けて考えてください。

古い建物は「既存不適格」かもしれない

築年数の古い校舎は、建築当時の法令には合っていても、その後に強化された基準には合っていないことがあります。こうした建物を「既存不適格」と呼びます。条文上は、第3条第2項により、新しい基準の適用を受けない建築物として扱われます。

ところが、用途を変えるときは別です。第87条第3項は、既存不適格の建築物の用途を変更する場合、第27条(特殊建築物の耐火等)や第35条(避難等)などの規定を、定められた例外に当てはまらない限り準用すると定めています。例外には、類似の用途の間で修繕・模様替をしない(または大規模でない)場合などが書かれています。つまり、「今は使えているから、別の用途にしても大丈夫」とはならない仕組みです。

この点が、費用に響きます。改修費の見積りは、変更後の用途の基準に建物を合わせる工事まで含めて取る必要があります(費用の層については別の記事で整理しています)。

用途地域・市街化調整区域の制限もかかる

第87条第2項は、用途を変更する場合に、第48条(用途地域ごとの建築物の用途の制限)などを準用すると定めています。その土地の用途地域で、変更後の用途が建てられるかどうかが問われます。学校として使えていた土地でも、他の用途が同じように認められるとは限りません。

真岡市の廃校公募の要項は、対象の4施設がいずれも市街化調整区域内にあり、都市計画法第34条の立地基準を満たす内容で活用事業を行う必要があると明記していました。立地の区域が何かで、できる用途の幅が決まります。応募前に、物件の都市計画上の位置づけを確認してください。

応募前に確認する4点

① 変更後の用途は、別表第一(い)欄に入るか。類似用途の範囲か

計画している用途を、条文の用途名と政令の類似用途で照らします。ここは自分で決め切らず、建築士や特定行政庁(建築指導の窓口)に「この用途は特殊建築物の用途変更にあたるか」を質問してください。

② その用途に使う部分の面積は、200平方メートルを超えるか

校舎のどの範囲を、どの用途に使うのか。面積の線引きで申請の要否が変わるので、使う範囲を図面に書いてから相談します。

③ 建物は既存不適格ではないか。確認済証・検査済証・図面は残っているか

築年や増築の履歴は、自治体が持っている情報です。募集要項の物件概要に書かれていなければ、質問期間のうちに聞きます。どの基準に合わせる工事が必要になるかが、改修費の見積りを左右します。

④ 用途地域・市街化調整区域の制限と、消防の窓口

都市計画の区域区分と用途地域を調べ、変更後の用途がそこで認められるかを確認します。あわせて、消防部局にも事前に相談してください。国土交通省の通知は、確認申請が不要な規模でも消防法令の遵守は変わらないとしています。

よくある質問

Q1. 学校のまま、イベントや貸し会議室に使うだけなら、用途変更になりますか?

用途変更にあたるかどうかは、使い方と建築基準法上の用途の区分によります。今回読んだ条文だけでは、個別の使い方が用途変更にあたるかは決められません。計画を示して、建築指導の窓口に確認してください。

Q2. 設計は誰に頼めばいいですか?

用途変更の確認申請や、既存建築物の適合状況の調査は、建築士などの専門家に相談する領域です。この記事は条文の読み方の整理で、設計や申請の代わりにはなりません。応募の段階では、計画の大枠を持って建築士と特定行政庁に相談するところまでを目安にしてください。

Q3. この記事の内容は、今後も変わりませんか?

建築基準法は改正されます。この記事は2026年10月時点でe-Govに掲載されていた条文を読んだものです。実際に計画するときは、その時点の条文と自治体の運用を確認してください。

まとめ

廃校の用途変更で、建築確認が要るかどうかを分けるのは次の3点です。

  • 変更後の用途:別表第一(い)欄の特殊建築物か(宿泊・集会・展示・遊技などは入る)
  • 類似用途かどうか:政令で指定する類似の用途相互間なら除かれる
  • 面積:その用途に使う部分の合計が200平方メートルを超えるか

ただし、申請が要らなくても、建築基準法令と消防法令を守る義務は残ります。古い建物は既存不適格かもしれず、用途を変えると新しい基準が適用される場合があります。この3点と、既存不適格・用途地域の確認を、契約前に済ませておくのが安全です。

国の補助金にまつわる手続(契約の時期と価格に関わる部分)は、こちらで整理しています。

→ 廃校活用の「財産処分手続」とは|契約前に自治体へ聞く5つのこと

応募資格と書類の読み方はこちらです。

→ 廃校の公募に個人でも応募できる?|要項で見る3つの場所

いま募集中の案件を探している方は、全国の公募・サウンディング情報を実際に開いて確認したまとめもどうぞ。

→ 廃校活用の公募・サウンディング情報まとめ【全国】

出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第6条・第87条・別表第一(e-Gov法令検索)
  • 国土交通省住宅局建築指導課長 国住指第661号「小規模建築物を対象とした医療・福祉施設、宿泊施設、集客施設等を所管する関係部局との連携について」(令和元年6月24日)
  • 市川町「旧鶴居中学校校舎等跡利用事業公募型プロポーザル実施要領」(令和8年度)/宮古市「宮古市廃校舎利活用希望者募集要項」(令和8年度版)/真岡市「真岡市廃校利活用推進事業 事業者提案 公募要項(抜粋)」

このページは条文の読み方の整理で、個別の案件に対する法的な助言や設計の代わりではありません。計画する案件は、特定行政庁・消防・建築士に直接確認してください。


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