廃校の公募に個人でも応募できる?|要項で見る3つの場所

「廃校に興味はあるけれど、会社でもない個人が手を挙げていいものなのか」。公募情報を見始めた人が、最初に引っかかるところです。

先に結論を書きます。個人の応募を要項にはっきり書いている自治体は、実際にあります。ただし、応募できることと、選ばれることは別の話です。この記事では、4つの自治体の募集要項を原本で読み、どこを見れば「個人で出せるか」「出したら何を問われるか」が分かるのかを整理します。不動産と金融の実務を15年やってきた立場から、要項の読み方に絞って書きます。

要項には何と書かれているか(4つの実例)

まず、実際の要項の言葉です。いずれも自治体が公開している資料から引いています。募集期間が終わっているものも含みます。いま応募先を探すための一覧ではなく、「要項にどう書かれるか」の見本として読んでください。

自治体・物件 応募資格の書き方 形
兵庫県市川町
旧鶴居中学校(令和8年度)
「法人、個人、任意団体を問わず、どなたでも応募できます」 売却(公募型プロポーザル)
岩手県宮古市
廃校舎(令和8年度版の要項)
「個人又は法人」 売却または貸付の希望を随時受付
茨城県龍ケ崎市
旧城南中学校(令和6年)
「法人または個人(複数の事業者等が共同して応募することも可)」 公募型プロポーザル(再公募)
栃木県真岡市
廃校4校(令和4年の質問回答)
「団体」でなければ応募資格はないのか、という質問に「法人格を取得する見込みがあれば応募可能です」 貸付のみ(売却なし)

個人を明記する要項もあれば、真岡市のように「法人格を取得する見込み」を条件に門を開けている例もあります。「廃校は法人しか相手にしない」と決めつけて調べるのをやめるのは早い、ということです。

一方で、個人で出せるかどうかは案件ごとに違います。ここから先は、要項のどこを読めば判断できるかです。

見る場所①:応募資格と「応募できない人」

応募資格の欄は、「誰が出せるか」と「誰が出せないか」の2段で書かれていることが多いです。後ろの段(欠格条項)まで読んでください。今回の4件で並んでいたのは、次のような条件です。

  • 国税・地方税を滞納している人(市川町・宮古市。龍ケ崎市も市税等を滞納していないことを要件に挙げています)
  • 暴力団や反社会的勢力に関わる人(市川町・宮古市)
  • 宗教活動・政治活動のために使う人(市川町・宮古市)
  • 契約を結ぶ能力のない人、破産者で復権を得ていない人(宮古市)
  • 応募書類に不備・不正のある人(市川町)

個人で出すときに現実的に引っかかりやすいのは、税の滞納の条件です。「滞納がないこと」は証明書で示すので、次の提出書類とセットで確認します。

見る場所②:提出書類に「個人用」の列があるか

個人の応募を想定している要項は、提出書類の表で個人と法人を分けて書いていることがあります。市川町の要項がその例で、次のように分かれていました。

書類 個人 法人
応募申込書・応募者概要書・事業計画書・誓約書・収支計画書・地域要望への対応 ○ ○
国税・地方税の未納がないことの証明書(応募日以前3か月以内) ○ ○
身分証明書(運転免許証等)の写し・住民票 ○
役員一覧表・定款等・登記事項全部証明書 ○
経営状況を説明する書類(損益計算書・貸借対照表など) ○

宮古市の要項でも、身分証明書は「個人が申請する場合のみ」と書かれ、納税証明書は最新1か年分を求めています。

ここで見落としやすいのは、事業計画書と収支計画書は個人にも同じように求められることです。法人の決算書がないぶん、「この事業でお金が回る」ことは計画書の側で示すしかありません。

見る場所③:審査項目に「事業者そのもの」の配点があるか

応募資格を通っても、選ばれるかどうかは審査で決まります。個人にとって大事なのは、提案の中身とは別に「誰がやるのか」を採点する項目があるかです。

真岡市の要項では、100点満点の内訳がこう書かれていました。

  • 事業内容 60点:市の政策との整合、地域活性化への貢献、事業スケジュールと資金計画の適正さ など
  • 事業実施者 30点:事業者の組織力、事業者の規模に適した事業内容か、提案事業の経験・実績
  • 価格 10点:賃貸借料の提案価格

さらに、あらかじめ決めた最低点に届かなければ、応募が1者だけでも「優先交渉権者なし」になる場合があると書かれています。競争相手がいなければ通る、という仕組みではありません。

市川町も、プレゼンテーション審査の観点として「事業実績」「財務の健全性」「収支計画の妥当性」「資金調達の確実性」を挙げ、委員の平均点が60点以上の上位者を候補者にするとしています。

つまり個人で出す場合、勝負は「組織が小さいこと」を、計画の確かさでどこまで埋められるかになります。

個人で出すなら、先に用意しておくこと

事業の大きさを、自分の体制に合わせる

真岡市の「事業者の規模に適した事業内容か」という審査基準は、裏を返せば身の丈を超えた計画は減点されるということです。真岡市の要項は、敷地全体の貸付を原則としつつ、一部だけの利用を希望する場合はその対象を明示するよう求めています。全部を使う計画にこだわらず、使える範囲を絞った提案ができるかも要項で確認します。

お金の出どころを、数字で説明できるようにする

「資金調達の確実性」が審査されるなら、自己資金と借入の内訳、借入なら金融機関とどこまで話が進んでいるかを説明できる状態にしておきます。今回読んだ要項では、真岡市・宮古市・市川町のいずれも、維持管理や改修などの費用を事業者側の負担とする条項がありました。なので、取得や賃料だけでなく、その後にかかるお金まで計画に入れます。費用の全体像は、別の記事で4つの層に分けて整理しています。

→ 廃校を借りるといくらかかるのか|費用は4つの層に分かれている

ひとりで足りない部分は、共同応募や法人化で埋める

龍ケ崎市は複数の事業者による共同応募を認め、市川町も共同申請用の構成調書の様式を用意しています。真岡市は、法人格の取得見込みがあれば応募できると回答しています。実績や組織力が足りない部分を、組む相手や器の作り方で補う道があるかどうかも、要項と質問回答で確かめます。

契約のあとに続く条件まで読む

個人にとって重いのは、選ばれたあとの条件です。市川町の要項には、次のような条件が並んでいました。

  • 建物は原則として解体撤去が条件(改修して使う提案は内容によって認める)
  • 売却基準価格は1,656,000円で、これは解体撤去費用相当額を差し引いた金額
  • 契約から3年以内に事業を始めないと、町が買い戻す場合がある
  • 事業は原則5年以上続ける。所有権移転から5年間は転売などに制限
  • 仮契約と同時に、売買代金の10分の1以上の契約保証金を納める

価格が安く見えても、解体・継続・転売制限の条件まで含めて「自分が背負えるか」を判断します。宮古市も、売却は一般競争入札で行い、仮契約後に売買代金の100分の5以上の契約保証金を納める、と書いています。

よくある質問

Q1. 要項に「事業者」としか書かれていません。個人は出せませんか?

「事業者」という言葉だけでは、個人事業主を含むかどうかは判断できません。応募資格の条文と提出書類の表を読み、それでも分からなければ担当課に質問してください。要項に質問の受付期間と方法が書かれていることがあります。市川町の場合はメールのみ・約10日間の受付でした。期間を過ぎると聞けなくなるので、最初に確認します。

Q2. 個人で応募して、選ばれたら法人を作る形でもいいですか?

真岡市は「法人格を取得する見込みがあれば応募可能」と回答していますが、これは真岡市のその公募での扱いです。応募者と契約者が変わってよいかは案件ごとに違うので、応募前に質問で確認してください。

Q3. 公募が出る前に、個人でも話を聞いてもらえる場はありますか?

公募の前に自治体が民間の意見を聞く「サウンディング型市場調査」があります。条件がまだ固まっていない段階なので、「個人でも応募できる形にしてほしい」「一部だけ借りられる形にしてほしい」といった意見を、条件そのものに対して伝えられます。宮古市のように、利活用の希望を随時受け付けて相談に乗る形の募集もあります。

→ サウンディング型市場調査とは|公募との4つの違いと、何を聞くべきか

まとめ

個人でも応募できる廃校の公募は、実際にあります。見る場所は3つです。

  • 応募資格:「個人」と書かれているか。欠格条項(税の滞納など)に当たらないか
  • 提出書類:個人用の書類が用意されているか。事業計画と収支計画は個人にも求められる
  • 審査項目:「誰がやるか」に配点があるか。あるなら、組織の小ささを計画の確かさで埋める

「出せるか」は要項を読めば分かります。「出して勝てるか」は、規模の合わせ方とお金の説明で決まります。

いま募集中の案件を探している方は、全国の公募・サウンディング情報を実際に開いて確認したまとめもどうぞ。

→ 廃校活用の公募・サウンディング情報まとめ【全国】

出典(いずれも各自治体の公開資料)

  • 市川町「旧鶴居中学校校舎等跡利用事業公募型プロポーザル実施要領」(令和8年度・募集期間 令和8年9月1日〜9月25日)
  • 宮古市「宮古市廃校舎利活用希望者募集要項」(令和8年度版)
  • 龍ケ崎市 情報提供資料「旧城南中学校の跡地活用事業者を募集開始」(令和6年5月10日)
  • 真岡市「真岡市廃校利活用推進事業 事業者提案 公募要項(抜粋)」および「公募要項に関する質問及び回答」(令和4年2月3日公表)

条件は案件ごと・年度ごとに変わります。応募を検討するときは、必ずその時点の要項を自治体のページで確認してください。


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