実家を貸すなら、直す前に借り手を探す|先にリフォームすると回収が10年を超える理由

なぜ「先に直す」と間に合わなくなるのか

実家や空き家を貸すとき、ほとんどの人が同じ判断を迫られます。「今すぐリフォームして借り手を探すか、それとも現況のまま貸すか」。

結論から言うと、先にリフォームすると、たいてい資金が先に尽きます。工事代金の回収に10年以上かかるか、あるいは最後まで埋まらないか。この記事では、なぜそれが起きるのかと、防ぐには何を先にすべきかを書きます。

「先に直す」が失敗する3つの理由

1. 工事の内容は、借り手が決まるまで確定できない

同じ建物でも、住居として貸すのか、事業用の事務所にするのか、人が集まる場所にするのかで、必要な工事は大きく変わります。

特に問題になるのが建築基準法上の用途変更です。住居から事業用途に変える場合、内装だけでなく建物そのものの基準を満たす必要が出ることがあります。消防設備・避難設備の追加が求められる場合もあります。

これらの要否は自治体の建築部局と消防に確認しないと分かりません。借り手が決まる前に工事を始めると、「おそらく住居だろう」で進めてしまい、後から事業者が決まったときにやり直しが発生します。

2. 空室の時間が、回収年数に上乗せされる

工事を終えた日から、お金が戻ってくるわけではありません。借り手が実際に入った日から回収が始まります。

例(金額は計算の形を示すための仮の値です):工事に300万円かかり、月5万円で借りてくれる人がいるとすると、単純計算では60ヶ月=5年で回収できます。ただし工事が終わってから3ヶ月空室だったら、その3ヶ月は何も生みません。回収年数は5年3ヶ月になり、空室が続けば6年、7年と伸びていきます。

その間も、固定資産税や火災保険料などの維持費は出続けます。

3. きれいになった建物は、値下げが難しい

心理的な話ですが、実務では本当に効きます。500万円かけて直した建物を月4万円で貸す決断は、心理的に難しい。「これだけかけたのだから」という気持ちが働いて、埋まらない賃料で待ってしまう。待っている間も維持費は出ています。結果として「安く貸すくらいなら貸さない」に陥りやすくなります。

正しい順番——5つのステップ

不動産と金融の実務15年、物件デューデリジェンス30件超を通じて使っている順序です。

  • 1. 現況のまま、借り手候補に見せる——汚くてもかまいません。目的は「この状態で使ってくれる人がいるか」を確かめること
  • 2. 候補から条件を集めて、用途を1つに絞る
  • 3. その用途に必要な工事だけを見積もる——ここで初めて建築部局と消防に確認する
  • 4. 工事金額と賃料で回収年数を計算する
  • 5. 合わなければ「直さない」を選ぶ——回収年数が10年を超えるなら、直さずに済む使い道(資材置き場・駐車場・倉庫など建物の状態に依存しない用途)か、売却に切り替える

5番目が抜けている案件が多いです。「直さない」は失敗ではなく、1〜4を回した結果として正当な結論になり得ます。

借り手の実在を確かめる方法

「現況で見せる相手がそもそもいない」という声をよく聞きます。それ自体が大きな情報で、その地域に需要がない可能性が高いということです。

調べ方のひとつは、自治体が出している公募やサウンディング(民間から意見を募る手続き)の資料を実際に開くことです。応募がゼロで終わった案件の条件を読むと、その地域で「通らない条件」が見えてきます。公開情報なので誰でも同じ方法で調べられます。

よくある質問

Q1. 借り手探しはどこに頼めばいいですか?

地域の賃貸仲介業者に「こういう物件があるが心当たりはあるか」と打診するのが最初の一歩です。1社だけでなく複数の窓口を試してください。

Q2. 現況で見せるのが恥ずかしい場合は?

そこが分岐点です。「この状態でも使ってくれる人」がいるかどうかで、その物件の本当の価値が決まります。恥ずかしさを理由に先に直すと、その費用を誰が負担するのかが曖昧なまま進んでしまいます。

Q3. 回収に10年を超えたら、貸してはいけないのですか?

「必ずダメ」ではありませんが、実務では警告信号として扱います。10年待つ間に建物は劣化し、追加の修繕が出ます。所有者側の事情も変わります。10年を大きく超える計画なら、直さない・売る・別の使い道を探すという選択肢を真剣に検討してください。

Q4. 自治体の公募・サウンディングはどこで見つかりますか?

市区町村のホームページを「空き家」「活用」「募集」などで検索すると関連ページが出ることが多いです。担当課に直接「最近の募集案件はあるか」と聞くのも有効です。


自分の物件で数字を置いてみたい方へ。手を挙げる前に潰す20項目のチェックリストはこちら。
活用可否チェックリスト20項目(note・1,480円)→

規模が大きい案件(施設・宿泊・公共系)で、事業として成立するかを判断したい場合は、5項目を送ると3営業日で一次診断(無料)をお返ししています。
遊休不動産 活用可否の一次診断(無料)→

実家・空き家の判断でよく一緒に読まれる記事

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA