「不動産屋に任せているのに、3ヶ月待ってもさっぱり動きません」
こうしたご相談をよく受けます。ただ「売れない」は原因ではなく症状です。熱があるのと同じで、その奥には打つ手がまったく違う4つの原因が隠れています。原因を特定しないまま「価格を下げましょう」「写真を撮り直しましょう」と動いても、進みません。
不動産と金融の実務を15年、物件のデューデリジェンスは30件を超えました。その中で見てきた「売れない空き家」の原因を4つに分け、確認する順番までお伝えします。
最初に聞くべき2つの数字
もし仲介業者に任せているなら、真っ先にこう聞いてください。
「問い合わせは何件ありましたか。そのうち、実際に内見に来た方は何件ですか」
この2つの数字で、あなたの空き家が動かない理由のおおよその場所が分かります。
- 問い合わせがほぼゼロ → 価格か見え方の問題
- 問い合わせはあるが内見がほぼゼロ → 見え方だけの問題
- 内見も進むが買い手からの申し込みがゼロ → 物件の条件が課題
この質問ひとつで、自分の物件がどこで詰まっているかが見えてきます。
売れない理由は4つに分かれる
④ 売る主体の問題(最初に確認)
名義が確定していない。共有者がいるのに合意を取っていない。遺産分割がまだ終わっていない。こうした状態なら、たとえ買い手が現れても、契約に進めません。
ここを確認しないまま①②③に時間をかけるほど、その労力は無駄になります。
確認先:法務局(登記事項証明書で名義を確認)と、相続人全員の意向確認。
③ 物件そのものの条件(次に確認)
接道しているか。建て替えられるか。用途地域は何か。農地が混じっていないか。境界は確定しているか。
こうした条件は、価格や見せ方では解決しません。ここで引っかかると、いくら安くしても、いくら写真をきれいにしても変わりません。
確認先:空き家がある市区町村(都市計画課で接道・再建築・用途地域、農業委員会で農地かどうか)と法務局(境界)。
① 価格が実勢と合っていない
「周辺の似た物件より安くしているのに」という方も多い。ただそれが、あなたの感覚であって、市場の感覚ではないかもしれません。
確認方法は明確です。国土交通省の不動産情報ライブラリで、同じ地域・同じくらいの築年数の物件が、実際にいくらで売れているかを調べる。ここで大事なのが「売り出し価格」ではなく「成約価格」を見ることです。
賃貸なら、市区町村の賃貸ポータルで同じ広さの物件を見て、いくらで何件出ているか、いつから出ているかを調べます。3ヶ月以上載り続けている物件が並んでいるなら、その価格帯では動いていないという信号です。
② 見え方の問題(最後に確認)
問い合わせはあるのに内見が進まない。ほぼ、ここです。
買い手は現地を見に来る前に、ネットの写真と情報だけで「見たい」「見たくない」を決めています。写真が少ない、暗い、傷を隠している、基本情報が足りない。こうした理由で一瞬で落とされます。
直し方は明確です。外観と水回りの写真を撮り直す。傷は隠さず写す。隠された傷を見に来た買い手ほど、幻滅が大きくなります。
確認する順番が重要
④ → ③ → ① → ② の順番で見てください。
理由はシンプルです。④と③は、金額や見せ方では絶対に解決しません。だから最初に潰す。そのうえで①を調べる。値下げの選択肢が本当に必要かが見える。最後に②です。
④③を確認しないまま①②に時間をかけると、いくら手を打っても動きません。
よくある質問
Q1. 役所に聞くのは難しくないですか?
窓口でも電話でも大丈夫です。ここで間違えやすいのが、問い合わせ先は「自分が住んでいる市区町村」ではなく「空き家がある市区町村」だという点です。自治体によって案内が違うので、まず電話して「農地かどうかを確認したい」「用途地域を知りたい」と伝えてください。必要な書類と担当窓口を教えてもらえます。
Q2. 業者が「問い合わせ何件、内見何件」を教えてくれません
その数字がないと、こちらは何が課題かを判断できません。まずは理由を聞いてみてください。それでも出てこないようなら、別の業者にも同じ質問をしてみる。答えの差そのものが情報になります。
Q3. 自分で調べるのと業者に任せるのは、どちらがいいですか?
④③を自分で確認してから、業者に「この物件は接道OK・農地なし」という情報を伝えたうえで任せるのが最強です。業者も判断がしやすくなります。
Q4. 4つすべてが問題ないのに売れません
その場合は、そもそも見られている数が足りていない可能性があります。どの媒体に、どのくらいの期間、どう掲載されているのかを業者に確認してください。露出を増やせないか、売り方そのものを変えられないか、という相談に切り替えます。
最後に
「空き家が売れない」という状態は、一つの原因ではなく、④③①②のどこかで引っかかっている可能性が高い。原因特定がなければ、打つ手は効きません。
あなたの空き家がどこで詰まっているのか。業者から聞いた「問い合わせ何件、内見何件」の数字と、④③①②の確認で見えてくるはずです。
自分の物件で数字を置いてみたい方へ。手を挙げる前に潰す20項目のチェックリストはこちら。
活用可否チェックリスト20項目(note・1,480円)→
規模が大きい案件(施設・宿泊・公共系)で、事業として成立するかを判断したい場合は、5項目を送ると3営業日で一次診断(無料)をお返ししています。
遊休不動産 活用可否の一次診断(無料)→
実家・空き家の判断でよく一緒に読まれる記事
- 空き家の固定資産税は6倍になるのか(特例が外れる新ルール)
- 相続した実家を売るなら3年目の年末まで(3,000万円控除)
- 実家をどうするか決められないとき、先に置く3つの数字
- 実家を貸すなら、直す前に借り手を探す
- 兄弟で相続した実家を貸す前に(名義と契約で止まる2か所)
- 空き家の借り手は「用途」ではなく「人」で探す
- 相続した実家の話し合いが止まる理由(先に揃える3つの数字)
- 実家と一緒に農地・山林を相続したら(届出の期限)
- 相続放棄と空き家の管理義務(残る人と残らない人)
- 実家の片付けはどこから(出口から逆算する順番)
- 空き家を解体するか迷ったら(壊す前に確認する4つ)
- 空き家になった実家の火災保険(「そのまま」が危ない)
- 実家の話は「家の記録」から切り出す
- 空き家バンクに登録する前に確認する4つのこと