「空き家バンクに登録すれば、借り手や買い手が見つかるだろう」。そう考えて登録を検討している方は多いと思います。
ただ、空き家バンクは物件を売り込んでくれる営業ではなく、掲示板に近いものです。載せても見落とされる、見られても問い合わせが来ない、問い合わせが来ても話が進まない。こうなるのは、登録の前にやっておくことが抜けているからです。
この記事では、登録前に確認すべき4つと、登録後に効かせるための実務を整理します。仕組みを正しく理解していれば、空き家バンクは入口を増やす有力な手段になります。
空き家バンクは「掲示板」だと理解する
空き家バンクは、自治体が運営する物件情報の掲示板です。営業担当が物件を宣伝してくれるわけではなく、あなたが出した情報が並ぶだけです。
借り手や買い手は、自分でバンクにアクセスし、条件で絞り込んで探します。その先であなたの物件にたどり着くかどうかは、掲載情報の質と、その自治体のバンクがどう運用されているかに左右されます。
つまり「登録する」という受け身の行動だけでは動きません。運用を確認し、情報を揃え、問い合わせへの対応体制を整える。この準備があって初めて、掲示板が機能します。
登録前に確認すべき4つのこと
① その自治体のバンクが、実際にどう運用されているか
運用は自治体ごとにまったく違います。次の点を、登録の前に窓口へ確認してください。
- サイトは定期的に更新されているか。決まった物件が残ったままになっていないか
- 新しい物件が掲載されるまでに、どのくらいかかるのか
- 問い合わせがあったとき、自治体が間に入るのか、直接あなたに来るのか
- 不動産業者が関わる仕組みか、個人間のやり取りが基本か
- 問い合わせはメールか、電話か
遠方に住んでいる場合、最後の2点は重い問題になります。自治体によっては不動産業者を紹介する仕組みになっていることもあるので、その場合は登録の前に、どの業者と組むかを相談しておくと早く進みます。
② 掲載に必要な情報を、いま持っているか
- 間取り
- 面積(建物と土地)
- 築年
- いまの状態(住める状態か、修繕が必要か)
- 設備の状況(トイレ、浴室、台所、給湯)
- 写真(外観、各部屋、庭)
この欄が埋まらない物件は、そもそも見られません。とくに写真がない、あるいは古い写真しかないというのは、素通りされる直接の原因になります。登録の前に、現地で撮り直してください。
③ 問い合わせが来たとき、誰が対応するのか
- 内見の日程調整を誰がするのか
- 内見に誰が立ち会うのか
- 質問への返信を、誰がどのくらいで返すのか
- 急な連絡に対応できる人がいるか
登録してから「対応できる人がいない」と気づくと、返信が遅れ、そのまま別の物件に流れます。これは登録前に決めておく話です。家族の誰がやるのかまで決めて、書き留めておいてください。
④ 条件を決めてあるか
借り手・買い手は条件で比較します。「相談」とだけ書かれた物件は、比較の土俵に乗りません。
- 売却か、賃貸か、両方の相談か
- 売却なら、希望する価格
- 賃貸なら、希望する賃料
- 引き渡しの時期
- 修繕を誰が負担するのか
- 交渉の余地があるのか
迷っているなら「相談に応じる」と明記したうえで、どこまでなら相談に応じるのかの範囲を示す。空欄にするより、はるかに問い合わせが来ます。
登録した後に効かせるための実務
写真と情報は「隠さない」
よくある失敗が、傷や古さを隠そうとして、写真を絞ったり、不都合な点を書かなかったりすることです。
内見に来た人は、結局それを実物で見ます。写真や説明との差が大きいほど、信頼を失って離れていきます。逆に、現状をありのまま書いておくと、後の「聞いていなかった」が減り、本気度の高い相手が残ります。
問い合わせへの返事を早くする
相手は複数の物件を並行して見ています。返信が遅ければ、その間に別の物件で話が進みます。登録した後は、問い合わせへの返信を優先順位の上に置いてください。③で決めた担当が機能するのはここです。
不動産業者と並行させてよい
空き家バンクと不動産業者は「どちらか」ではありません。並行して構わない場合が多く、入口が増えるぶん見つけてもらいやすくなります。
ただし、二重に依頼するときの取り決めは事前に確認してください。誰の紹介で成約したかによって手数料の扱いが変わることがあります。ここを曖昧にしたまま両方に出すと、後で揉めます。
よくある質問
Q1. 登録するだけで、借り手・買い手は見つかりますか?
自治体の運用状況と、物件の条件次第です。登録しただけで見つかることもあれば、まったく反応がないこともあります。確率を上げるには、この記事の4つ(運用の確認・情報の準備・対応体制・条件の決定)を先に埋めることです。
Q2. 登録に費用はかかりますか?
自治体によって異なります。その市区町村の窓口で直接確認してください。また、写真の撮影や書類の整理を人に頼む場合は別に費用がかかります。自治体によっては、こうした費用への補助を用意していることもありますが、これも自治体ごとに違います。
Q3. 修繕を条件にしたいのですが、登録できますか?
「買主が修繕する」「売主が修繕する」といった条件を掲載できるかどうか、また書き方の決まりは自治体によって異なります。登録の前に、その市区町村に確認してください。
Q4. 登録したのに反応がありません。
まず掲載情報を疑ってください。写真が古い、情報が足りない、条件が曖昧。この3つのどれかであることがほとんどです。掲載内容を更新したうえで、それでも動かないなら、そのバンク自体がどのくらい見られているのかを窓口に聞いてみてください。並行して不動産業者にも出すことをお勧めします。
なお、「そもそも借り手がいる地域なのか」を先に確かめておくと、無駄な待ち時間が減ります。確かめ方はこちらにまとめています。
まとめ
空き家バンクは入口を増やす手段であって、条件と情報を整える作業の代わりにはなりません。登録の前に、運用を理解し、情報を揃え、対応体制を整え、条件を決める。この4つが埋まっていれば、掲示板はちゃんと働きます。
不動産と金融の実務を15年、物件のデューデリジェンスは30件を超えました。その中で言えるのは、空き家の活用は「誰に届けるか」でほぼ決まるということです。空き家バンクは、その「誰に」を増やす道具のひとつに過ぎません。道具を活かすかどうかは、登録前の準備で決まります。
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