廃校の公募やサウンディングに手を挙げるか迷ったとき、実務で最初にやるのは「4つの数字を置く」ことです。この記事では、いま実際にサウンディング中の案件を1件選んで、公開資料だけでどこまで数字が置けるかをそのままやって見せます。
対象は静岡県掛川市の旧原田小学校。市がサウンディング型市場調査を実施中で、調査回答の希望日は令和8年12月4日(金)です(2026年8月22日にページを開いて確認)。
※以下はすべて市の公開ページと統計データからの整理で、掛川市の公式見解ではありません。応募を検討する方は必ず市の資料と窓口で確認してください。
① 入口の数字 — 年にいくら払って持つか
この案件は珍しく、市がFAQで貸付料の概算を先に出しています。
- 原田小を1年間全体で借りた場合の試算: 年19,087,910円(土地+建物×1.1・令和9年度に貸し付けた場合)
- そのうえで市自身が「この額のままでは困難だと想定している」と書き、貸付料の提案も受け付けています
入口の数字が公開されている案件は、事業者側が「いくらなら成立するか」を逆算して対話に入れます。多くの公募ではここが伏せられたまま提案を求められるので、これは検討しやすい部類です。売買価格は令和9年度以降に測量・鑑定をしてから、とされているため、いま置けるのは賃借の目線だけです。
② 直す数字 — 使える状態にするのに総額いくらか
ここは公開資料だけでは置けません。築年・構造・アスベスト等の調査状況が回答を左右するためです。置けない数字は「置けない」と認め、サウンディングで聞く質問に変換します。
- アスベスト・PCBの調査報告書はあるか。ない場合、調査費はどちらの負担か
- 用途変更(学校→宿泊・飲食・工場等)を前提にしているか。消防・避難設備の現状図面はもらえるか
- 屋根・外壁・設備更新の負担区分
文部科学省の調査では、築40〜50年の学校建築で有害物質の撤去費が当初見込みの2〜3倍になる例が報告されています。②が置けないうちに用途のアイデアを固めるのが、止まる案件の典型です。
③ 稼ぐ数字 — 誰が、いくら、何回払うか
年間約1,900万円の貸付料(市の試算ベース)を払うとすると、賃料負担率を売上の10%に収める業態なら年商約1.9億円、20%なら約9,500万円が必要になります。これは「地域の来客だけのBtoC」では重い水準で、市も貸付料の減額提案を受け付けている理由がここから読めます。
エリアの数字も置いておきます(FUDOSAN DB・2026年8月時点)。
- 掛川市の人口: 現在 約11.2万人 → 2050年推計 約9.5万人(-15.4%)
- 住宅地の平均地価: 46,688円/m²(前年比 -0.17%)
- 年間の不動産取引: 55件
人口は緩やかに減るエリアです。地域内需要だけで成立させる用途より、圏外から呼べる用途・BtoB(製造・加工・倉庫・研修等)・複数収益源の組み合わせが検討の中心になります。なお業種の制限はなく、施設は一括で扱う想定と明記されています。
④ 戻る数字 — 改修費が何年で戻るか
②が未確定なので④も置けません。ただし先に決めておける撤退ラインはあります。
- 回収年数が契約期間の7割を超えるなら見送る(契約期間はサウンディングで確認)
- 調査後の改修見積りが調査前の1.5倍を超えたら資金計画を引き直す
現時点の一次診断
判定: 保留(B相当)— 良い材料と、未確認の材料がはっきり分かれている案件。
- 良い材料: 入口の数字が公開されている/市が減額提案を受け付けている/業種制限なし/回答期限まで時間がある(12月4日)
- 未確認: ②直す数字(築年・有害物質・用途変更)/契約期間と原状回復義務(④を決める2条件)
つまり「応募するかどうか」を今決める必要はなく、サウンディングで上の質問を聞いてから決められる、というのがこの案件の位置です。サウンディングは説明会ではなく、ここで伝えた条件が後の公募要項に反映される交渉の入口です。
同じ4つの数字で他の案件がどうなったかは、実際に転用が続いた事例と途中で止まった事例を並べた記事にまとめています。
廃校活用の失敗例と成功事例25選|文部科学省データで読む「転用が続く条件」 →
自分の案件で同じ表を作りたい方へ
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いま募集中の案件を探している方は、全国の公募・サウンディング情報を実際に開いて確認したまとめもどうぞ。
→ 廃校活用の公募・サウンディング情報まとめ【2026年8月版・関東/近畿/中部】
この記事の手順を、自分の案件で使いたい方へ
- 廃校・空き施設の活用可否チェックリスト20項目(¥1,480) — この記事の4つの数字を、20項目のチェックリストと撤退ラインまで落とし込んだもの
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出典: 掛川市サウンディング型市場調査 公開ページ(2026年8月22日閲覧)/FUDOSAN DB(2026年8月・掛川市エリアプロファイル)/文部科学省「廃校施設等活用状況実態調査」。数値・条件は変更される場合があります。必ず最新の公募資料をご確認ください。
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